国際協力事業【特派員レポートVol.3】
ビジネスコースのスタートは、ラオス国立大学の講師が担う
市場経済への移行に伴って、ビジネス人材の育成が求められる中、ラオス日本センター(LJC)では2001年からビジネスコース(フェーズ1)が始まりました。このフェーズ1では、主にラオス国立大学経済経営学部の講師が中心となって5年間で2,000名以上が受講しました。こうしたプロジェクトの成果が高く評価され、引き続き、事業の現場に根ざした実践的な日本的経営を学ぶべくフェーズ2(2006年~2010年)の実施が要請されました。
専門家プロフィール
- 【専門分野】
- マーケティング、中小企業育成
- 【所属】
- リロエクセル(株)国際協力事業グループ
●ニーズ調査により新しいプログラムを開始
フェーズ2の前半では、日本人コンサルタントによる主に製造業を対象にした経営診断・現場指導と生産管理講座が実施されました。前半の2年間を終ったところで、ニーズ調査を行なったところ、一方では、よりレベルの高い経営全般について学びたいという要望と、他方では、製造業以外のサービス業や小売業、自由業などの企業から受講希望が寄せられました。そこでフェーズ2後半では、これらの要望に応え2つのプログラムがスタートしました。「MBAプログラム」と「実践ビジネスコース」です。
市場経済化を目指すラオス経済にあって、MBAプログラムを通じて経営管理の専門家を、実践ビジネスコースを通じて中小企業の事業家をそれぞれ育成し、優秀なビジネス人材を輩出することが目的です。
「MBAプログラム」と「実践ビジネスコース」
MBAの第1期生は2008年9月に35名が選考され入学しました。MBAプログラムの講座としては、コア科目(9科目)はローカル講師が、選択科目(6科目)は日本人講師がそれぞれ担当しています。第1期生は1年半の授業を終え、2010年3月に卒業し、現在、彼らはラオスの官界、金融界、実業界、国際機関などで活躍しています。続いて第2期生36名が2009年9月に入学し、2011年3月の卒業を目指して、現在修士論文の作成に懸命の毎日です。
一方実践ビジネスコースでは、講座の内容を「生産管理」に加えて「マーケティング」や「経営戦略」、「ビジネスプラン」など幅を広げて実施することにしました。また講座と併行して、コース受講者企業に対して日本人講師による現場指導やカウンセリングが積極的に実施され、LJCと受講者との信頼関係が醸成されていきました。
●LJCビジネスコースの特徴は実践本位・受講者本位であること
LJCビジネスコースの講座の特徴は、なんと言っても実践本位であるということです。実践本位の講座とは、1.講座が理論だけでなくノウハウが含まれていること。2.講義ではケーススタディを中心に進められ、ディスカッションや事例発表が多く取り入れられていること。3.受講者とインタラクティブなスタイルであること。4.講義終了時には、全受講者が翌日からの取り組むべき実践行動目標が持てるようにすることです。講師はこうした方針に沿ってそれぞれに自分の講義に合った机の配置を考え、ビジュアルを駆使するなど工夫を凝らした受講者本位の講座を心掛けました。
その結果、受講者による満足度は全体を通して87%と高く評価されました。
「センター」から「インスティテュート」へ
こうした活動の実績が認められ、2010年5月に従来の「センター」という位置づけから「インスティテュート」に格上げされ、英語名称が LJI(Laos-Japan Human Resource Development Institute)」に変更されました。それに伴ってLJIビジネスコースの更なる充実を目指すべく心を新たにした次第です。
経営者の世代交代の中心を担うLJI受講者
現在のラオスの国家的課題は、1つは2015年のアセアン統合であり,1つは2011年から始まる第七次国家社会経済開発計画の達成であります。その中心を担うのが若手中小企業であると言われています。
今ラオスでは経営者の世代交代が急速に進んでいます。LJI MBAプログラム及び実践ビジネスコースの受講生の平均年齢が、いずれも30歳強と正に世代交代の主役と云って過言ではありません。こうした将来のラオス経済を背負う若きビジネス人材を育成する私共の責任は、今後とも極めて重いものと言えるでしょう。
2011年1月 吉川晴喜