株式会社リロエクセル > 国際協力事業 > プロジェクト紹介 > 実績① > 特派員レポートVol.1

ここから本文です。

国際協力事業【特派員レポートVol.1】

「パラグアイ品質・生産性センター(CEPPROCAL)強化計画プロジェクト」を終えて ~プロジェクトコンサルタント中嶋修~

現地中小企業の競争力強化を目指して。

本プロジェクトは技術協力案件で、現地受け入れ機関はパラグアイの商工省、実施機関は民間のパラグアイ工業連盟(UIP)の研修部門に新設された「パラグアイ品質・生産性センター(CEPPROCAL)」です。上位目標は、このCEPPROCALが提供するコンサルティングサービスによって、現地の産業、特に中小企業の競争力強化を目指しています。

プロジェクト自身の目標としては、品質・生産性に関する研修およびコンサルティングサービスを提供するセンターとしてのCEPPROCALが設立され、質の高いコンサルティングサービスが提供されることにありました。

専門家プロフィール

【専門分野】
CEPPROCAL強化プロジェクト長期専門家(販売・マーケティング)
【所属】
リロエクセル(株)国際協力事業グループ

パラグアイ品質・生産性センター(CEPPROCAL)

第1フェーズの成功を受け、2007年より第2フェーズが始動。

パラグアイの中小企業(従業員数99人以下)はGDPの14%、総労働人口の17.8%であり経済開発において重要な役割を担っていますが、1995年の MERCOSUR(メルコスル)(南米南部共同市場)加盟後、自由貿易に対する競争力は極めて低い状況が続いていました。その後2000年に実施された開発調査を経て、第1フェーズとして「中小企業活性化のための指導者育成計画」(2002~2005)が実施されました。この期間に168回の研修セミナーが実施され、参加者は延べ3,600名に及びました。

この成果に基づきUIPはこの企業研修期間を半ば独立させ、パラグアイの品質・生産性向上の中心的存在とし、コンサルティング活動を通じて、パラグアイの産業、特に中小企業の強化を目指しました。これを受けてパラグアイ政府は「品質・生産性」、「マーケティング・販売」の2分野のコンサルティング能力を高めると共に、当センターを自立的、持続的に管理・運営するため「組織強化」の技術協力を日本に要請。これが第2フェーズと位置づけられる本プロジェクトでした。

現地産業の特色に合わせたコンサルタント育成など、
様々な研修やセミナーを実施。

プロジェクト期間としては2007年1月から2010年2月までの約3年間です。求められる成果として、「CEPPROCALの実施能力の強化」「コンサルティングサービス能力の向上」「コンサルティングサービスの地方展開」の3点がありました。技術協力分野として日本側の協力は、「組織強化」「品質及び生産性」「マーケティング及び販売」の3分野です。

このプロジェクトの特色は実施機関が民間であったこと、プロジェクトの詳細設計に専門家が参加したこと、準C/Pがコンサルティングに貢献したこと、パラグアイ側とのコミュニケーションが良好であったことが上げられます。

(1) CEPPROCALの実施能力の強化

短期専門家(日本人・アルゼンチン人)による指導がプロジェクト中に4回行われました。組織診断、分析と課題の抽出、中期計画の策定、自立発展性の確保をテーマに毎回専門家が出す課題を次回の訪問までに現地側で解決し、2010年のプロジェクト終了時には次の3年間の中期計画を作り上げました。

(2) コンサルティングサービスの能力向上

育成すべきコンサルタント数を充足させるために外部の人間である準C/Pを参加させました。彼等は各自の仕事を持ちながら学ぶ高い目的意識を持った人材です。育成は、専門家による各分野の集中講義(約70時間)とその後のコンサルティングを通したOJTで行われました。プロジェクト期間中に各分野17社のコンサルティングをチーム(3~4人/チーム)で担当し、1人当たり5社担当。また、専門家が行う講義の補完として日本人、アルゼンチン人の短期専門家を招聘し「電子商取引」、「顧客満足」、「市場機会の発見」、「ムダ取り」、「食品安全」、「ロジスティック」等の集中講義や公開セミナーを行いコンサルタントとしての知見を広めました。

参加者は、仕事とその後のCEPPROCALでのコンサルティング研修ということで、当初27名程登録していましたが講義終了時点では20名に、また最終的にコンサルティングのOJT実習に選抜され準C/Pと呼ばれた15名の人達も終了式でコンサルタント認定証を受けたのは合計8名ということで、彼等の熱意がまさにこのプロジェクトを支えたとも言えるでしょう。

コンサルティングのモデルとなった企業業種は様々で殺虫剤メーカー、業務用洗剤メーカー、システムキッチン製造・販売、紙類輸入卸、製パン、アイスクリーム製造等多岐に及ぶものでした。品質・生産性分野では造船所というのもありました。内陸国のパラグアイですが、大西洋に注ぐラプラタ河の支流パラグアイ河を行き交う“バルカサ”(大きなはしけ)を造っています。

コンサルタント人材育成に加え専門家として様々な機会にセミナーを行いました。パラグアイ最大のイベントであるEXPOにおける工業パビリオンでの中小企業経営者向けセミナー、工業の日のUIPでのセミナー、また地方の大学の創立記念日での学生向けセミナー、日系人青年向けの起業セミナー等延べ15回に及びました。

(3) コンサルティングサービスの地方展開

またパラグアイ商工省からの要請により急遽決まったコンサルティングサービスの地方展開は地方企業の閉鎖性、良質なコンサルタント人材の確保の困難さ、物理的な効率性(距離、車両手配、経費)から、集中講義と1社における企業診断にて終了し、首都圏でのコンサルティングに注力することとなりました。

現地産業の特色に合わせたコンサルタント育成など、様々な研修やセミナーを実施

CEPPROCALの実施能力の強化

コンサルティングサービスの能力向上

コンサルティングサービスの地方展開

18名のCEPPROCAL認定コンサルタントを養成

18名のCEPPROCAL認定コンサルタントを養成

上位目標達成のためにパラグアイ商工省とUIPが今後の協力のための協定を結びました。CEPPROCALの実施能力の強化の点では、2009年度実績は2007年度比で収入、利益とも伸び、知名度調査では2007年度9.4%から 2009年度は61.7%まで(知っている+名前は知っている)向上し、コンサルティングを受けた企業ではその62%で改善効果が見られ、満足度調査では 29社中76%の企業が80%以上の満足度を示しました。また、現地主導で新規コンサルタント養成の仕組みを定着させ、隣国類似機関との協力協定を締結する等、自立発展に向けた取り組みが現地主導で行われています。

コンサルティングサービス能力向上の点では、専門家による集中講義、5社での企業コンサルティングOJT、新規コンサルタント養成の指導、認定試験を通じ、両分野18名のCEPPROCAL認定コンサルタントが養成されました。プロジェクトの終了式には商工省工業次官、UIP総裁、JICAパラグアイ所長よりコンサルタント認定証が一人ひとりに手渡されました。会場には彼等を3年間支えて来た家族も大勢駆けつけ、これまでの苦労を労っていたのが非常に印象的でした。

自立発展の道筋をつけたCEPPROCAL。今後の中小企業の活躍に期待。

品質・生産性センターとしての自立発展の道筋をつけたCEPPROCALですが、まだまだ未完成の部分も多く残されています。対内的には、例えば組織として機能するための諸制度(就業規則、評価制度等、人事規定)の見直し、対外的にはパラグアイ中小企業のニーズに合った研修やコンサルティングの提案力の強化等です。今後も、パラグアイの中小企業経営者の意識を変え、方向性を示し、彼らの競争力が強化されることで、メルコスルを自分の市場として活躍する中小企業が増加してゆくことを期待して止みません。

2010年4月 中嶋修

自立発展の道筋をつけたCEPPROCAL。今後の中小企業の活躍に期待

株式会社リロエクセル > 国際協力事業 > プロジェクト紹介 > 実績① > 特派員レポートVol.1