株式会社リロエクセル > 国際協力事業 > プロジェクト紹介 > 実績⑤ > 特派員レポートVol.2

ここから本文です。

国際協力事業【特派員レポートVol.2】

「ベトナム日本人材協力センタープロジェクト(フェーズ2)ビジネスコース運営管理」で「人材開発コース」を担当して ~プロジェクトコンサルタント小野豊和~

開都千年で変わるベトナム

ベトナムは今年開都千年を迎え、街の要所には記念の花文字が飾ってあります。街路樹の合間をクモの巣のように張り巡らされた電線網を地下に埋設するための工事も始まり、至る所で道路や歩道が掘り返されています。通勤ラッシュ時の渋滞は激しさを増し、相変わらずバイクが雲霞のごとく現れ、所構わず縦横無尽に練り走ります。所得水準が上がりバイク族が車を持つ時代も遠くないようですが交通網の麻痺は必至と思われます。

一方、悠久の昔から道端に陣取っていたと思われますフォーの屋台、路地市場で鶏を捌くお婆さんとその肉を焼くお嫁さん、天秤棒を担ぎ野菜を運ぶ行商たちには時空を超えた変化は感じられません。高級外車がその横を通り過ぎるかと思うと、自転車族を相手にタイヤに空気を入れる商売もあります。歩道の横壁に鏡をかけて客を待つ青空理髪店など何とも不思議な光景です。

古い歴史と近代が混在するベトナムで、携帯電話だけは国民共通のコミュニケーションツールのようです。

専門家プロフィール

【専門分野】
人事管理、人材開発、国際経営、広報と危機管理
【所属】
東海大学 政治経済学部教授

ベトナム

ベトナム

ベトナム

日越に共通する戦後復興、VJCCへの期待

発展するベトナムに生きる若者は実に逞しい。日本的経営に対する関心も高く、ビジネスコース受講者たちの目は輝いていました。議論好き、発表好きで質問も多く飛んできます。発展を続けるベトナムと日本とは戦後復興という共通点があります。圧倒的な資源力と軍事力を背景に戦ったアメリカは、日本には勝利しましたがベトナム戦争では敗者となりました。日本は勝者の米国に学び戦後復興を成し遂げました。ベトナムは米国を撤退に追い込みましたが、後に米国の自由な思想を取り入れビジネスを発展させました。戦後65年を迎えた日本を成熟社会と言うならば、南北統一35年目のベトナムはまだ発展段階にあります。

日本政府のベトナム支援事業の出発点を民政化による産業振興と考えますと、米国が行った戦後の日本に対する復興支援と似ています。敗戦により焦土と化した日本の復興は、ガリオア・エロア資金による産業基盤の整備、フルブライト留学制度の活用など米国による物心両面の支援に負うところが大でした。お蔭で近代日本の礎となる多くの人材が育ち、戦後の日本の財界、政界、官界および教育界の発展に大いに寄与することになりました。

ベトナム支援事業に3年間関わってきましたが、ベトナム日本人材協力センター(VJCC)が目指す方向も民政化で、旧共産圏を中心に設置した他の日本人材協力センター同様、日本の経営思想の伝授によりベトナムの発展に寄与することです。

1986年にドイモイ(刷新)政策が採択されて以来、経済改革と対外開放によって経済発展を続けるベトナムは、97年頃一時減速したものの、2000 年に施行された会社法によって民間企業設立が加速し、再び成長路線を歩み出しました。器用さと労働意欲のある人材に恵まれているため日本企業の進出も盛んです。WTO加盟、AFTA関税引き下げを機に、グローバルな視点と競争力を持った人材育成が急務となり、VJCCが推進してきたビジネスコースは時宜を得たプログラムで、毎回多くの受講者を得ました。

心を伝えた「人材開発コース」

私の担当だった日本的経営における人材開発コースには延べ700人を超える若者が集まりました。家族を大切にする社会背景下のベトナムでは、家族意識が経営の原点になっている日本的経営に共感できるのでしょう。雇用して育てて管理職に登用する考え方は、日本では周知の事実だが、欧米的経営思想には存在しません。人材開発コースは、基礎編、中級編、応用編の3つのレベルで構成したため多くのリピーターもいて、講師と受講者の継続した関係を築くこともできました。ある受講者の意見を紹介しましょう。

「先生の講義は学問的な人事管理のノウハウだけでなく、実践を通じた生きた内容で心に響くものがありました。当時、経営上の問題を抱えて悩んでいましたが、質問に対する答えを聞いて勇気づけられました。我慢強く目標に向かってやり続けること。そして、予期せぬ方向に向かったとしても、それを受け止める心構えは、“Life is what happens to you while you are making other plan.”(人生とは何かをしようと計画しているときに起こる出来事)という言葉を聞いた時、諦めずに前向きに生きることへの勇気をいただきました」

人材開発コース

まさにベトナムは山本五十六が座右の銘とした「してみせて、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かぬ」が活きる国であると思います。ファミリー意識が高い日本企業は、子育てと同じように従業員を育てて伸ばし、叱るよりも褒めて能力を最大限に発揮させるモチベーション志向の高い経営であることに共感が得られたと思います。

ビジネスコースは異業種交流の機会でもあり4日間のコースを通じてチームワークによる問題解決の方法を体で感じ取ってもらえました。受講者からは同窓会的アフターフォローコースの要望も出てきました。10年のプロジェクト最終年に当たり、ノウハウを現地側に引き継ぐ工夫も行われ、CEOコース、学生向けコース、そして経営塾は好評でした。経営塾に参加している貿易大学の先生との面談を通じて、VJCCが果たしてきた役割の理解と今後への強い期待を感じることができました。講師、受講者双方にとって、即戦力となる実践事例を学ぶことへの期待が強く、今後の連携強化に向けた新たなプランづくりが進むことを期待します。このようにビジネスコース受講者は、チームワーク、5S、QC、改善、ホウレンソウなど日本的経営の真髄とも言える特徴を肌で実感し、それぞれの会社で活用することによって今後のベトナム発展の当事者として成長していくでしょう。

2010年9月 小野豊和

株式会社リロエクセル > 国際協力事業 > プロジェクト紹介 > 実績⑤ > 特派員レポートVol.2