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国際協力事業【特派員レポートVol.5】

「ペルー国一村一品運動支援アドバイザー」を担当して~プロジェクトコンサルタント 山長 昌彦~

そもそもの動機

会社勤務時代、中南米のペルーに約13年間駐在した。中南米はスペイン語圏という特殊要素もあって、10年以上の駐在経験者は沢山いるが、私自身はペルーという国に人一倍強い「愛着」を持っていると思う。と言うのは、会社時代の仲間は当然だが、会社を離れた家族ぐるみの友人も沢山いてペルーは第2の故郷と思えるようになったからだ。また性格も時々ペルー人と言われるようになってしまった。(よく言えばラテン、悪く言えば?)。そのような関係で、自分に出来る範囲でペルー国に何か貢献できることはないかと思っていた時に、「ペルー国一村一品運動支援アドバイザー」というJICAの公示があり応募した次第である。

ペルーにおける一村一品運動の背景と取り組み

ペルー国では貧困削減を実現するため、各々の地域独自の資源や文化を各地域が発掘し、これらを多様な国内外の市場ニーズに応えうる商品やサービスとして開発していく地域経済開発の取り組みが求められている。
同国では、日本の協力を得て2009年3月に、初めて「一村一品運動セミナー」が全国で開催され、理念や我が国での同運動に対する経験が共有された。 その後、カウンターパート機関の決定や、関係省庁から一村一品運動における候補産品の推薦等が行われ、同運動を適用して商品開発をしていこうという動きとなった。

2012年1月に赴任してみて驚いたのは推進に関しての青写真がなく、前年の大統領選挙以降半年間、一村一品運動が全くストップしている状態であったことだ。
まず取り組んだテーマは、沢山の候補産品の中から10の優先商品を選出し成功事例を作り、その成功事例の輪を広げていこうという内容だった。その為には何を基準に優先商品を選び、またどの成果をもって成功事例とするのか基本的な作業から取り組んだ。
自分自身で基準を決めて推進していけば早く進めることが可能だが、進め方や考え方を共有して現地の人に考えてもらう必要がある。会社のような組織を活用した指導でなく、1パートナーとしての意見提言、意見交換をしながら相手を納得させて一つ一つ仕事を進めていくと言う根気のいる仕事だった。

専門家プロフィール

【専門分野】
財務管理、生産管理

OVOPポスター

より理解してもらうために

青空のもとでの検討会

一村一品運動とパナソニックの経営理念

一村一品運動には3つの原則がある。一つ目は「ローカルにしてグローバル」、二つ目は「創意工夫で自主自立」、三つ目が「人材育成」である。一つ目の事例は、ワインなど今ではグローバルな商品でもスタートはローカルな地域産品に過ぎなかったということだ。二つ目に関しては、創意工夫には限りがなく、全員参加で知恵を出し合い、自主責任経営を目指さなければならない。一村一品運動の原則を突き詰めていけば、パナソニックの経営理念と全く同じだと言うことに気がついた。一村一品は正に事業部制であり、その中での自主責任経営、社員家業、全員参加、社会貢献、人材育成など、活動のあらゆるところに経営理念と合致していることが多くあり、会社時代を思い出しながら楽しく取り組むことが出来た。同時に一村一品運動といっても、自らの収益で維持運営できることが基本であると思った。

踊り子と

番外編

第2の故郷であるペルーに貢献と大きなテーマを掲げて、今回のプロジェクト推進は楽しく、一生懸命取り組むことができた。一方で沢山の仕事以外での楽しい出来事も沢山あった。
一つ目は友人との久しぶりの再会だ。海外駐在から帰国して13年経過するが、中には20年ぶりに再会できた友人もいて、また、一方では新しい友人が出来た。
二つ目は会社勤務時代に行くことが出来なかったような“超”田舎を訪問できたことだ。北部のアマソナス州は、インカ以前の遺跡や世界3番目の落差のある滝など沢山の観光資源を持つ地域で、南部のクスコ州マチュピチュに次ぐ第2の観光エリアとして、日本と共同で数年後を目指して観光開発が進められている。そこに「道の駅」を建設しようとする案があり、近くにどのような地域産品があるかを調べるため今回アマソナス州を訪問した。リマから飛行機で2時間、飛行場からアマソナスの州都まで車で7時間、更にそこから遺跡まで車で4時間と、普段行けないところに行くことが出来た。その他、活動を通じて「現地の人とのふれあい」など沢山の思い出が出来た。

課題とこれから

ペルーに13年間住んでいたものの、資源が豊かで、果物や野菜の豊富さに改めて感心した。太平洋岸を寒流が流れているため、美味しい魚があり、海岸沿いの平野にはトマト、コーン、果物・野菜など、また厳しい山間地からは原産地でもある大きなジャガイモ、更にブラジルとの国境沿いのジャングル地帯には加工すれば健康食品や薬にもなると言われる珍しい木や木の実が豊富にある。地方に行けば、貧しそうに見えるが食材が豊富で生活面には事欠かない豊かさがある。

ペルーは一時期7000%もの超ハイパーインフレ時代があり、店頭価格が朝、昼、晩3度変わると言われた時代があり、生活面や会社経営環境において非常に厳しい時代があった。その後、2000年以降、5~10%の安定的な経済成長を続け、都市部は驚くばかりの変化で、久しぶりの訪問でその変貌ぶりに驚いた。しかし、地方に出張してみると昔と全く同じで道路は未舗装、新しい産業がなく、雇用機会もなく、現金収入の少ない貧困状態のままであった。

まだまだペルーにおける一村一品運動はスタートしたばかりである。地方では貧困状態が続くものの、自分達が持っている「自然の宝物」に気づいていない状況である。当初、計画した成功事例が一つでも出来て、その事例を紹介することによって成功の輪が広がることが期待されている。成功の条件は一村一品運動の3原則であり、自らの収益で運動を維持推進出来ることである。既に、成功事例になりそうな産品が育っており、収益が出ることによりプロジェクトメンバーが楽しく笑っている姿を早く見たいと願っている。

2013年1月 山長昌彦

ペルー北部ソンチェの峡谷にて

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